ICT 施工で生産性、安全性、利益が大幅アップ、 成功のカギは内製化へのあくなき探求心と実行力
Customer Case Study - 事例
埼玉県春日部市に本社を置く金杉建設株式会社は、ICT 施工を積極的に実践する「i-Construction のトップランナー」として全国規模で知名度が高い。成功のカギは、ICT 施工を徹底的に内製化(インソーシング)したことだ。3 次元起工測量や設計データ作成のアウトソーシングや、ICT建機等のレンタルサービスの利用をしないことで、毎回の工事で技術と利益を確実に獲得し、積み上げていくことができる。同社は、ライカジオシステムズのマシンコントロール・ガイダンスシステム、GNSS、トータルステーション、地中レーダー探査システムなどを駆使してICT 施工を行いながら、生産性向上、安全性強化、利益向上などの成果を着実にあげている。
ICT 施工の内製化には専門組織と専任者が不可欠
金杉建設株式会社(代表取締役社長・吉川祐介氏)は、河川工事・道路工事・橋梁工事・上下水道工事・耐震補強工事など、土木工事全般を手がける総合建設会社である。公共工事が中心であり、発注者は、国土交通省関東地方整備局、および、埼玉県、春日部市などの地方公共団体が占める。
創業は1950年。70年以上の歴史を重ね、約70 名の社員を擁する地場土木会社として地元で親しまれると同時に、ICT 施工を積極的に実践する「i-Constructionのトップランナー」として全国に名を馳せている。
ICT 施工を内製化する企業姿勢が評価されて、2017 年に国土交通省が創設した「i-Construction 大賞」では第1 回の優秀賞を受賞した。その後、先端技術の活用により、建設現場のあらゆるプロセスに変革をおこす建設DXでも成果をあげ、「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」PRISM(Public/Private R&D Investment Strategic Expansion PrograM)にも参画している。
「当社がi-Construction成果をあげるようになったカギは、『ICT 施工の内製化』にこだわり、アウトソーシングを利用せずに自社で完結できる体制をいち早く整えたところにあります」と語るのは、i-Construction推進室 室長の小俣陽平氏である。
内製化のきっかけは2015 年にさかのぼる。国土交通省が「ICT 活用工事」とは何かを初めて定義し、試験発注した案件に取り組んだ。
「国交省の定義通り、『3 次元起工測量』に始まり、『3 次元設計データ作成』、『ICT 建設機械による施工』、『3 次元出来形測量』等の施工管理をして、『3 次元データの納品』をしました。しかし、測量、設計は外注で、ICT 建機もレンタル利用のため、終わってみれば社内には技術も利益も何も残らなかったのです」と小俣氏。
「これではいけない」と、翌2016 年には、会社の柱として「i-Construction」を前面に掲げ、内製化に着手した。まずはライカジオシステムズの土木工事向けマシンコントロール・ガイダンスシステムを2 台導入して、使い始めたのである。
ICT 建機は通常の建機よりも高価だが、従来とは考え方を変えることで、自社購入に踏み切れたという。
「『3 回仕事をすれば元が取れて、4 回目以降は利益になる、そういう場合はGOサイン』が当社の現在の判断基準です。最新鋭のICT機器でも、4 回目以降、あるいは5 回目以降は利益に転じると予想できれば購入する、と社長が舵を切りました」と小俣氏は説明する。ただし、ICT 施工の内製化を成功させるには、機器を購入するだけでなく、専門部署を新設し、専任者を確保することが不可欠だと小俣氏は強調する。
「3 次元データの作成・処理や、ICT 機器を現場に合わせて使いこなす算段は、現場の既存人員では抱えきれません。土木建設会社は昔から、現場に課題を丸投げして、『工夫して終わらせてこい』と任せる傾向がありましたが、ICT 施工はその発想ではうまくいかないのです」と小俣氏。
2017 年初頭、金杉建設は専門部署として「i-Construction 推進室」を設立。工事管理本部で積算や購買に携わっていた小俣氏が、専任者として抜擢された。
i-Construction 推進室の重要な任務のひとつが、プロジェクトを落札してから1 週間以内に開催する工事引継会議までに現場の3次元モデルを用意することだ。
「土木工事では、平面図、断面図、詳細構造図など、図面がとにかく多い。土木屋はみんな、数十枚の図面を見ながら頭の中で立体形状を組み立てますが、把握するのに時間がかかり、認識レベルも人によって異なります。ところが3 次元画像を見れば、立体形状が一目瞭然。図面の見比べに無駄な時間をかけなくて済みます」と小俣氏。
落札段階ではCADデータはなく、資料提供されるのはPDF 図面のみだが、それでもi-Construction 推進室は「使える3 次元モデル」を1 週間以内に描くノウハウを積んできた。
「3 次元設計データや3 次元モデルは、アウトソーシングして時間と経費をかければ誰でも手に入れられます。しかし、内製化は、『スピード感』で歴然とした差が出るのです」と小俣氏は言う。
会議では、互いの意見が乖離したり、後で思い違いに気づくといった心配がなくなった。それどころか、「ここの箇所は以前のあの工事と似ているので、特別な機材を用意しておくと良いのではないか」など、踏み込んだ議論が早い段階から行われるようになった。内製化を徹底したことによる「圧倒的なスピード感」である。
ソフトウェアは、建設・土木用3 次元CAD「TREND-CORE」(福井コンピュータ株式会社)、3D施工データ作成ソフト「SiTECH3D」(株式会社建設システム)などを使用している。
「3 次元設計データはもちろん、CG/ アニメも、工事スタート時の合意形成に大きな力を発揮します。特にアニメは、視点を変えたり、重要ポイントをアピールしたりするところで、できるだけ効果的に活用するように心がけています」と小俣氏。
金杉建設は、今では「ICT 活用工事」と指定されたものに限らず、大半の工事をICT 施工で行い、起工測量から出来形管理まで3Dデータで一貫管理している。i-Construction推進室も小俣氏1 人では手が回らなくなり、総勢3 名体制に強化された。
こうした本格的な内製化の取り組みは内外から高く評価されている。金杉建設は、国土交通省関東地方整備局が2020 年度に初認定した「ICTアドバイザー」26 社のうちの1社として認定された。2021 年は活動実績のあったICTアドバイザーに感謝状が贈られた、最多の活動実績を認められた金杉建設には「i-Construction 金バッジ」が授与されている。
マシンコントロール・ガイダンスシステム導入で丁張りが不要に
金杉建設のICT 施工内製化を支えてきたのが、ライカジオシステムズの多彩な製品群だ。
同社では、2016 年に、バックホウ用3Dマシンガイダンス・システム「Leica iCONiXE3」とブルドーザー用3Dマシンガイダンス・システム「Leica iCON iGD3」を2 台ずつ導入。その後数年おきに追加して、現在合計7 台のマシンコントロール・ガイダンスシステムを利用している。
「iCONシリーズを選んだのは、もともと持っている建機に後付けできるからです。しかも、建機メーカーや機種を選ばず、大型機から中型機まで対応できて汎用性が高い。使った後で別の建機に載せ替えて使い回すこともできます。多様性、広がりを感じるソリューションで、『ライカ、いいな』と思いました」と小俣氏は軽快に語る。
既存建機へ後付けできるiCONシリーズは、あらかじめマシンコントロール・システム/マシンガイダンス・システムを搭載したICT 建機のフルシステムを購入するのに比べて、初期投資を格段に抑えつつICT 施工を始めることができる。また施工状況に応じて、重機間でiCONシリーズを載せ替えできるため、多くの台数のICT 建機を所有する必要がないことも、初期投資の削減に大きく貢献する。
GNSS受信機、アンテナ、各種センサーで構成されるiCONシリーズは、3D設計データと、GNSSを含むハイブリットセンサー経由で収集されるリアルタイムな切土/ 盛土の情報の両方をコントロールパネルに表示して、重機オペレータの操作を誘導する最先端のシステムである。iCONシリーズを搭載した建機のオペレータは、設計図通りの正確な掘削作業を従来よりも短時間で行える。
特に、工数削減・時間短縮に役立つのは、マシンコントロール・ガイダンスシステムが「電子丁張り」の役目を果たすため、実際の丁張りが不要になったことである。
土木工事では、丁張りを掛けたり修繕する作業は毎日発生する。測量と木杭打ちを2 人で行う作業であり、現場監督にとってかなりの負担だ。冬場は寒いなか、雨に濡れながら丁張り掛けをすることもある。
建機のオペレータも、これまでは、丁張りを壊さないように気を配るところで余分な手間がかかっていた。また工事中は、丁張りの高さから検尺して「5cm下げが設計高」などと指示する作業員が建機に付き添うことが多いが、この作業員の姿が視界から消えると、どこにいるかを確認するまでオペレータは旋回や移動ができず、作業を中断することになる。
ところがマシンコントロール・ガイダンスシステムを使う現場では、丁張りが不要だ。丁張りが示していた「位置と高さ」は、コントロールパネルの画面表示に完全に置き換わった。
建機に付き添って検尺する作業員も不要になったため、安全面でのストレスもない。
「また市街地では、丁張りをすると近隣に住む方の車が出入りできなくなるなどの支障も発生しますが、丁張り不要であれば住民の負担も減ります」と小俣氏は補足する。
オペレータが作業途中で建機から降りる回数が激減したことも、生産性向上につながっている。切削の高さを目で確認したり、作業の詳細を現場監督に聞きに行ったりする必要がなくなったのである。
マシンコントロール・ガイダンスシステムの利用を現場に定着させるため、小俣氏は「3次元設計データだけは必ず現場監督が作る」というルールを徹底している。
「現場作業をする人には、『現地盤との擦付』などさまざまなこだわりがあり、発注者と協議を重ねて作成していく3 次元設計データを、現場が作成できるようになればレスポンスが早くなる」と小俣氏は考えているからだ。
金杉建設には、現場監督が40 名程度いる。
小俣氏は、ベテランには3 次元管理で何がでるかを教えて、施工現場での3Dの活用方法を考えてもらい、若手にはハードウェアやソフトウェアのトレーニングを実施して実際の操作方法を習得・現場で実行してもらうという。ベテランの経験と若手の吞み込みの良さを合わせると、互いに補完しながら工事を進められ、さらにはベテランの経験から3 次元データの新しい使い方が見えてくる。
マシンコントロール・ガイダンスシステムのコントロールパネル画面。3D設計データとリアルタイムな切土/盛土の情報が表示される。また、作業の要所要所で、設計図の色が変わったり、ブザーが鳴ったりするため、複雑な作業もミスなく行える
チルト補正機能で気泡管調整が不要、GNSS測量作業の時間が半分に短縮
2021年、金杉建設は、GNSS RTKローバー「Leica GS18 T」(以下GS18 T)と「Leica GS18 I」(以下GS18 I)を1 台ずつ導入し、動視準・自動追尾機能搭載トータルステーション「Leica Viva TS16」(以下TS 16)と組み合わせて使いながら、測量の技術革新も実践している。
「GNSSのGS18 T とI は、チルト(傾斜)補正技術が画期的です」と小俣氏。
GS18 T とGS18 I は、気泡管を水平に保つ必要がなく、ポールが斜めになっていても高精度な計測ができる。
「従来のGNSS測量は、作業時間のほとんどを気泡管を合わせる作業が占めていました。これが全面的に不要となりましたから、作業時間が半分以下に短縮しました。また時々、従来の方法で測定してデータを比較してみますが、精度も高い。気泡管を合わせなくても信頼して使えます」と小俣氏は言う。
GS18 TとGS18 Iは、水平・垂直に機器を固定しなくても、高精度な計測ができる
GS18 T とGS18 I に搭載されているオートレコード機能も、「10m移動するごとに自動的に測位する」といった設定をして、便利に活用している。移動距離のみならず、時間、高低差、あるいはそれらの組み合わせでも自動測位できるため、さらなる使いこなしを工夫していきたいと考えているところだ。
GS18 I を購入したのは、チルト補正やオートレコードに加えて、革新的なビジュアルポジショニング機能を備えたからだ。現場で見たままを画像データとしてキャプチャし、オフィスに戻ってから、その画像から点を計測できるようになる。
「GNSS はもちろん、ドローン、3Dスキャナなど、さまざまな機器を駆使してもどうしても測りにくい場所、たとえば屋根で上空が覆われているところや、崩れかけていて危険な場所などに、ビジュアルポジショニング機能を使いたい。また、GS18 I の計測アイコンをクリックして歩くだけで出来形が取れて、さらに点群データにも変換できるので、納品データ作成にも活用できます。そのほか、掘削した土を山にして仮置きするとき、周りを写真測量で撮るだけで土量を概算するといった使い方も計画しています」と、小俣氏の活用アイデアは尽きることがない。
さらにトータルステーション「TS16」については、「自動追尾がポイント」と小俣氏は評価する。
「従来のトータルステーションは、測る人とプリズムを持って移動する人の2 人でやる作業でした。ところがTS16 なら、プリズムを移動して途中で視野がさえぎられてもロックオンを堅持してくれますから、1 人で測量を完結できます。測量が1 人作業化することで、別の現場から1 人借りてくる必要もなくなり、人移動・調達が相当に減りました」と小俣氏は、自動追尾機能が、省力化とコスト削減をもたらしていると語る。
トータルステーション「TS16」は、プリズムを持った測量者が数十メートルも遠くに離れても、確実に自動追尾。高精度な測量を1人作業で完結できる
大規模な堤防工事のやり直しを防いだ地中レーダー探査システム
2021 年にはもうひとつ、地中レーダー探査システム「Leica DSX」(以下DSX)を導入した。日本での導入第1 号ユーザである。
地下埋設物損傷は、建設会社が細心の注意もって避けなければならない事故のひとつだ。上下水道、ガス管などを損傷すれば社会的な影響も大きい。そこで、埋設管調査を効率よく簡単に行えるDSX が注目されている。
「もともとこの分野の製品に興味を持ってウォッチしていました。DSX は、深さ2mと、従来の他社製品に比べて2 ~ 4 倍の深さまで検知できる点を評価しました。水道管は基本的に1.2mの深さ、下水管はその下に埋まっているので、2mまで検知できれば上下水道をカバーできます」と小俣氏。
余分な人手を増やすことなく、気軽に試せて、検知結果もわかりやすく表示されるのがDSXの特長だ。しかも精度はきわめて高い
DSX は購入してすぐに威力を発揮した。
ある堤防工事で、10 月に開始して3 月納品する仕事がほぼ完成していた2 月に、問題が発生した。隣の河川敷で、別の発注者に依頼された別の工事会社が古い橋の残骸を撤去する工事を開始したところ、予定外の大きな管が埋没していることがわかったのだ。土地の所有者が異なる別目的の工事だが、工区は接している。壊れかけた大きなコンクリート管は川に沿って伸びており、金杉建設の工区にまで続いている恐れがあった。
堤防は、すべて土を用いて頑丈に作るものと定められており、異物の埋設は許されない。管が埋没していた場合、すでに工事が完成している堤防を壊し、管を探して撤去してからやり直さなければならない。
さっそくDSXで探査したところ、工区が切り替わるちょうどその位置で、管がなくなっていることがわかった。念のため、途切れた部分を試掘してみたところ、バックホウの爪の真ん中で、管のある/ ないが分かれていたというほど、正確な検知であった。
工事の終わった堤防を壊さずに済み、納期遅れも避けられた。DSXの威力は関係者全員に強い印象を与えた。
DSXのクイックスキャン画面。赤茶色の部分に太い管がずっと伸びているが、工区が変わったとたんに管が消滅し、工事やり直しの必要がないことがひと目でわかった
DSXでの探査結果を、3D点群処理システム「TREND-POINT」(福井コンピュータ)に取り込んでモデリングした画像。DSXは、
レーダー波形図表示、2D・3Dトモグラフィ(断層画像)表示、地下配管マップ作成などのほか、点群処理システムや3次元CADへのファイル出力も可能だ
「手軽に使えるのもDSX の特長です。『試しにやってみましょう』と1 人が動かして、画面を見れば誰もが納得します。事前勉強も、むずかしい判定技術も要りません」と小俣氏。
人手作業を増やすことなく、事故を未然に防ぎ、安全性を確保できる―― 。
地中レーダー探査システムの威力を実感した金杉建設は、新製品の高精度ユーティリティロケーター「Leica ULTRA」(以下ULTRA)追加導入も検討中だ。DSX 以上に手軽に埋設物の位置を特定できるULTRAは、DSXと補完的に組み合わせ、現場ニーズに応じて活用していく計画である。
「ICT 施工をやってみたい」と意欲ある若い人が集まってくる
マシンコントロール・ガイダンスシステム、NSS、トータルステーション、地中レーダー探査システムと、各種ICT 機器を駆使するICT 施工によって、金杉建設は、生産性向上、安全性、利益向上などの成果を着実にあげている。
「すでにさまざまなプロセスで総合的に浸透しているため、効果を『導入前/ 導入後』のように切り分けて比較することはできません。
特にGNSSとトータルステーションはすべての現場で使うのがあたりまえになっていて、効果を定量評価することは困難です。ただ、当社はもう、ICT 施工から抜け出せません。
これがICT 施工で効率化が図れることの最大の証明ではないかと思うのです」と小俣氏は語る。
丁張りが要らない。紙図面を時間をかけて見比べる必要がない。バックホウやブルドーザーのオペレータがストレスなく仕事できる。「2 人必須作業」が減る。現場間で人員が移動したり、人員を調達したりする必要がなくなる。
「いまさら丁張りの木組みに戻れと言ったら、現場監督は拒否するでしょう。それほどにICTと非ICTとの差は大きいのです」と小俣氏。すべての工事で週休二日を確保できるようになったのも、ICT 施工の成果が影響しているという。
加えて、売上も純利益もアップしている。3D起工測量から3Dデータ作成まで内製化しているからこそのメリットである。
さらに大きな成果が企業ブランディングの成功だ。
「ICT 施工の金杉建設」というイメージは、全国規模で定着した。さまざまな組織から、講演、講習会に来てくれという申し込みがくる。
さらに新人採用の際は、「ICT 施工をやりたいと思って御社を選びました」と、新卒の若い人が目を輝かせて面接にくる。
金杉建設は、意欲ある若い人が働きたいと思う、魅力的な会社へと進化したのである。
土工作業の位置出しにAR利用を計画中
小俣氏が次に取り組みたいと考えているのが、AR(拡張現実)である。
ARを利用すれば、スマホなどのデバイス画面に工事の完成画像を表示させ、現実と重ね合わせて見ることで、土木工事の位置出しを正確に行える。現在のARは5cm程度の誤差があるが、土工作業では許容範囲だ。ことにライカジオシステムズの「ハンディ型ARシステム※」は高精度であることから、小俣氏は導入を検討している。
「VR、MRもありますが、ARはみんなで見られるところが良い。大きなモニターにミラーリング表示させれば、複数名で画面を見る事ができます。ICT の『C』は『Communication』であり、みんなで情報をわかりやすく共有して、正しい合意形成ができてこそICT だと思うのです」と小俣氏は語る。
Communication を重視する小俣氏は、同業の他の建設会社との交流に向けても動き出している。埼玉県で、ICT 施工の内製化を進めようとしている他社に声をかけて、技術交流会/ 共同研修会を開催する計画なのだ。
「競合というより、同志が顔を合わせてみんで高めあいたい、同じ話題のできる友達がほしい。他社のICT 施工の現場を見学したい、うちの現場にも来てほしい」と小俣氏は熱く語る。
確かに、i-Construction の本来の目的は、特定企業の「1 人勝ち」ではなく「みんなで向上していく」ことだ。「みんなで知恵を出し合、技術を磨き合って、ICT 施工を広めていこう」という金杉建設の呼びかけは、社会全体・国全体の技術向上へとつながっていこうとしている。